直観レベルのルール 倫理学 part11

道徳的な判断をベストな場面で行使できるか、ヴァーグナーは批判的である。

 

ヴァーグナーは大天使のように人間が間違いもなく判断できるとは限らない、いついかなるときもその状況でベストな行動を取れるという大天使ではない、と主張したかったのであろう。大天使は思慮深く、救うべき方法を見出す可能性がある。

 

 そのために、普段の場におけるルールは、「幸福を最大化する」よりも即座で明白な答えを出せる、わかりやすいルールでなければならない。これが直観的なレベルのルールである。直観的なレベルのルールは「人を殺すな」「人のものを盗むな」「人に嘘をつくな」などの義務論的な風味を持つものとなる。一般的には功利主義は"道徳的権利"という概念を認めないが、直観的なルールとしては「功利主義的な計算に対する切り札」としての「権利」を認めることが、二層功利主義では求められるのだ

 

 

私たちは道徳判断を直観レベルのルールに頼って行使する傾向にある。

 

誰かがゴミ袋を重くて大変そうにしていたなら、ゴミ袋を持ってあげますよ、と言えばその人のためになるのではないか。誰かを助けるためには、身体的に健康であると有益であろう。海でさらわれている人に浮き輪を投げるための力を有することが要である。

 

では直観的なルールとは具体的にはどんなものであるかというと、ヴァーナーは直観的なルールを「共通道徳」「個人道徳」「職業倫理」「法律」の4つに分けている(「法律」が直観的なルールであるという考えは、ヘアではなくヴァーナー独自のものであるらしい)。

 

共通道徳 Common Morality:国ごとに文化の差異というものがあり、文化を基に生活する者たちが基本的に同意するような道徳ルールが存在する。日本では年賀はがきをお正月に送るという文化があり、道徳的な人なら年賀はがきの交換をプランするであろう。

 

個人道徳 Personal Morality:それぞれの人々が個人的に抱く道徳であり、家庭の教育や文化・宗教によって教えられた道徳観を、自分自身の経験や反省を通じて調節や修正をしたものであることが多い。ーー個人の自分なりに他者に対して手伝える機会に、その人が個人道徳を積むことがあり得るであろう。

 

職業倫理 Proffesional Ethics:兵士という職業においては、倫理的に軍備のために活動する、という規範がある。兵士はウクライナ軍備に携わる例があり、自国のために働く。兵士は兵士らしく、医者は医者らしく、生活することを推奨されることが職業倫理である。

 

法律 Laws:ヴァーナーによると、法律とは直観レベルの道徳ルールの一部を成文化したものである。ただし、法律が制限する範囲は共通道徳よりも狭くあるべきである。功利主義的な観点からすれば非道徳的な物事であっても、それを法規制の対象とすることによる副作用のほうが大きい場合があるからだ。また、個人の生き方も基本的には法律でどうこうするべきではない(どのような生き方が自分にとって好ましいかは人それぞれに学んでいくものであり、権威によって強制しても良い効果はでない)。「このような道徳的な行為をするべきだ」ということも法律が押し付けるものではなく、共通道徳や私的領域の範疇である。しかし、他者に危害を与えないことなど、司法や警察による規制・強制力を持ってしてでも人に課されるべき根本的で重大な義務も存在する。そして、制裁のための暴力装置というものは警察・司法が独占していることをふまえると、警察や司法が強制するルール(法律)が成文化されて公開されていることは重要である。