スピノザは「政治論」で、平和と安全を保証する諸政体の相互的な確立を主張した。君主制・貴族制・民主制において政治的共同体が国の保全を不備なく行使することを目指したスピノザは、自身の説く宗教心・道義心・端正心のうち宗教心を一番重視した。「神の観念を有し、神を認識する限りのわれわれから生じるすべての欲求および行動」と呼ぶ宗教心は、宗教心が人間を「正義と隣人愛との実践による神への敬虔と服従と」に導くものであり、しかも、「正義」の実践が「和合を生み」、それなしには平和も維持されない国宝の遵守を意味する。隣人愛が平和を維持し、和合を促進するためになされる一切のうちに存するものであった以上、宗教心こそが、和平のための国民の持つ真愛かつ正義なのである。
「他の人々と友愛を結ぶ場合の根底となる欲求」とされる端正心は人間の平和的和合状態の形成に、「善き行為をなそうとする欲求」とされる道義心は、人間の信義の遵守へと導いて、寛容と勇気とから成る真の人間性へと転化させることが懸念される。